認定日本語教育機関の「授業科目」という概念をどう処理するべきなのか

※注 このコラムは「授業科目」に対しての考察です。現段階では制度があいまいなため特に結論を出せる段階にはないと考えています。

11月24日の「文化審議会国語分科会日本語教育小委員会」議事録にある「認定日本語教育機関日本語教育課程編成のための指針(案)」を見ると「科目」というワードが48回出てくる。

これは「認定定日本語教育関の審査における確定事項」に定められる事になるので、非常に重要な考え方だろう。

「科目」は、今まで日本語教育機関(専門学校 日本語科を除く)には、あまり馴染みのない概念なのではないかと思う。

WSDBを販売する中で、導入が難しのが、専門学校の日本語科と大学の留学生別科だが、それは科目という概念を一部採用する学校が多いからだ。

科目という概念が、カリキュラム全体に影響を及ぼす大学用や専門学校用は、出席や成績に科目との明確なつながりがあるため、定義しやすく日本語学校と大きな差となって出てくる。そのため、システムでは完全に異なる仕組みとして実装されている。

分かりやすい例でいうと、科目が持つ「単位」という考え方である。

専門学校の場合は「単位」ではなく「授業時間」とする学校も多くあるが、どちらとしても、ある科目を修得するために、学校側が学生に行っている授業の時間数に関係している。

翻って専門学校の日本語科や、大学別科では科目を設定したとしてもその扱いは難しい。

入学から卒業までの在籍期間が入学時期によって異なり、教育機関として修了と認める総単位数(総学習時間数)が決まっているわけでもない(今後決まってくる可能性はあるが)、入国遅れがあれば、その科目を履修するために必要な授業時間数を確保できていない事になることも予想されるが、該当学生の日本語修得が早く再度その科目を受けるレベルではない可能性も高い。

そもそも、学位と結びつかない日本語教育機関が持つ科目は、大学の聴講生や専修学校一般課程等が受ける科目と性質が近いように感じる。

つまり、何を教わるかは名前からある程度推測されるが、それを履修したからといって「何か」が認定されるわけではない。しかし、「知識」が増えたり、「できる」事が増えたりするという結果にコミットするタイプのものである。

認定日本語教育機関における「科目」の概念は、「日本語教育小委員会(第121回)(令和5年9月26日)」の議事資料から確認できる。

資料の中には「各授業科目の到達目標、一定の期間・レベルごとの学習目標は Can do で設定する。」とあるがCandoと科目の関係性だけでなく、科目が「シラバス」「授業」「成績」とどのように関係していくものなのか、もしくは学校で自由に設定してよいものなのかによって、学校の授業運用や、学校システムは大きく変わることになる。

WSDBには、すでに科目という概念があり表面上管理する事は可能だが、あくまで専門学校と、大学の流用となっている。

仮に、大学等と同じように科目を運用すると、その事務的な手間は現在の比ではなくなることは、システムの作り手としてよくわかっている(というか、大学のものをそのまま日本学校に当てると大学よりも複雑になる可能性がある)。

それだけに、システムで学校側の負担を軽減できなければ、地域で力を発揮している募集人数の少ない日本語学校などは、どんどん厳しくなってくると考えられる。

ちなみに大学用の履修管理システムの相場は、日本語学校用の50倍以上だが、さらにそれを使用するのに管理を行う教務部(日本語学校でたまにある教務事務)があり、専属で仕事を行っている。

科目は、確かに日本語教育機関の教育内容を縛るものではないのかもしれない。教材ありきで授業を行っている学校が、授業を行うために教材を使うという主体性をもつことも重要だと理解できる。

しかし、補助金があり、複雑な制度でもある程度の人数を配置できる教育機関と、補助金のない学校が同じような手間をかけられるかは、是非、制度設計に含めてもらいたいと思っている。

WSDB(システム)は効率化するサポートしかできないので、そもそもの仕組みが複雑化してしまうと、効率化にも限度がある。

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WSDBは、大学用、専門学校用を開発する中で、日本語教育機関用として利用できる機能を無償で公開しています。

すでに科目管理、シラバス作成、授業報告機能などこれからの日本語教育機関に必要となりそうな機能を公開し、認定日本語学校の要件に合わせて修正を行っていきます。

株式会社OneTerrace

井上智之

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